この記事でわかること
- 就労移行支援・就労継続支援A型・B型、それぞれの対象者と目的の違い
- 収入・期間・卒業後の進路を一覧比較表でスッキリ整理
- IT就職を目指すなら、どのサービスを選ぶべきかの判断基準
読了時間の目安:約9分
はじめに
「就労移行支援と就労継続支援って、どう違うの?」
この質問、支援員をしているとものすごくよく受けます。それもそのはず——名前が似ていて、どちらも「就労」という言葉が入っていて、どちらも「障がいのある人が働くための支援」というイメージがある。混乱するのは当然です。
実は私自身、適応障がいで休職していたとき、最初にこの3種類のサービスを調べて「結局どれを使えばいいの?」と途方に暮れた経験があります。
この記事では、3つのサービスを「対象者・目的・収入・期間・卒業後の進路」という軸で徹底的に比較します。

就労系福祉サービス3種類の概要
まず全体像をざっくり把握するための一覧表です。
| サービス名 | 一言で言うと | 主な目的 |
|---|---|---|
| 就労移行支援 | 「一般就労に向けた訓練の場」 | 一般企業への就職を目指す |
| 就労継続支援A型 | 「雇用契約を結んで働く福祉の職場」 | 就労の継続・安定を目指す |
| 就労継続支援B型 | 「雇用契約なしで働く福祉の職場」 | 就労体験・社会参加を目指す |
この3つは「目的」が根本的に異なります。就労移行支援は出口が一般企業への就職であるのに対し、就労継続支援A型・B型はその場で働き続けること自体が目的です。
就労移行支援とは
対象者
- 身体・知的・精神・発達障がいなどの障がいがある(手帳の有無は問わない場合が多い)
- 一般企業での就労を希望している
- 原則として65歳未満
目的
就労移行支援の目的はシンプルです。一般企業への就職、それだけです。
そのために、職業スキルの習得(PCスキル、ビジネスマナー等)、体調管理や生活リズムの安定、就職活動のサポート(履歴書作成・面接練習)、就職後の定着支援(最大6か月)をトータルで提供します。
利用期間
原則2年間(最大24か月)。延長申請が認められるケースもありますが、基本は2年で一般就労を目指すスケジュールで進みます。
費用
世帯収入に応じた自己負担上限月額が設定されており、多くの方は無料または月額0円で利用できます。住民税非課税世帯は自己負担なし。住民税課税世帯でも月額9,300円が上限です(2026年4月時点)。
詳しくは → 就労移行支援とは?使い方・費用・対象者をわかりやすく解説
収入について
就労移行支援を利用している間は、基本的に賃金は発生しません。利用中の生活費は、障害年金・生活保護・家族のサポートなどで賄うケースが一般的です。
就労継続支援A型とは
対象者
- 一般企業での就労が難しい障がいのある方
- 雇用契約を結んで働くことができる方(体力・精神的安定がある程度必要)
- 原則として65歳未満
特徴
A型の最大の特徴は、事業所と雇用契約を結ぶ点です。最低賃金が適用されます(地域によって異なるが、東京都では2025年時点で時給1,163円以上)。
就労移行支援との違い
| 比較項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 |
|---|---|---|
| 目的 | 一般就労への移行 | 継続的に働く場の提供 |
| 雇用契約 | なし(訓練) | あり |
| 収入 | なし | 最低賃金以上の給与 |
| 利用期間 | 原則2年 | 期限なし |
| 卒業後 | 一般企業へ就職 | 一般就労・B型移行等 |
就労継続支援B型とは
対象者
- 就労移行支援やA型を利用したが一般就労・雇用契約が難しかった方
- 年齢制限なし(A型・就労移行は65歳未満)
- 体調・精神的な波が大きく、定期的な通所が難しい方
特徴・工賃
B型の特徴は、雇用契約を結ばない点です。収入は「工賃」という形で支払われ、全国平均は月額約16,000〜17,000円程度(厚生労働省調査より)。あくまで「社会とのつながり・活動の継続」を主目的とするサービスです。
就労移行支援との違い
| 比較項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 目的 | 一般就労への移行 | 就労体験・社会参加 |
| 雇用契約 | なし(訓練) | なし |
| 収入 | なし | 工賃(平均約1.6万円/月) |
| 利用期間 | 原則2年 | 期限なし |
| 卒業後 | 一般企業へ就職 | A型・就労移行・一般就労等 |
3つの違いを徹底比較
| 比較項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 一般就労への移行 | 雇用契約での就労継続 | 就労体験・社会参加 |
| 対象者 | 一般就労を目指せる状態の方 | 雇用契約で働ける方 | 雇用契約が難しい方 |
| 年齢制限 | 原則65歳未満 | 原則65歳未満 | 制限なし |
| 利用期間 | 原則2年(上限あり) | 期限なし | 期限なし |
| 雇用契約 | なし | あり | なし |
| 収入 | なし(訓練期間) | 最低賃金以上の給与 | 工賃(平均約1.6万円/月) |
| 費用負担 | 世帯収入に応じた自己負担 | 世帯収入に応じた自己負担 | 世帯収入に応じた自己負担 |
| 卒業後の主な進路 | 一般企業へ就職 | 一般就労・継続利用等 | A型・就労移行・一般就労等 |
| ハードルの目安 | 中程度(就職意欲が前提) | 中〜低(雇用契約が前提) | 低(まず通うことが目標) |
「どれを選ぶべきか」の判断フロー
一般企業で正社員・契約社員として働きたい └→ 就労移行支援 ✅ 雇用契約を結んで福祉的な環境で安定して働きたい └→ 就労継続支援A型 ✅ まずは外に出ること・軽い作業から慣らしたい └→ 就労継続支援B型 ✅
ただし、これはあくまで目安です。支援機関(相談支援事業所・障害者就業・生活支援センター等)に相談しながら決めるのが現実的です。
IT就職を目指すなら就労移行支援が最適な理由
理由1:出口が「一般就労」に直結している
就労継続支援A型・B型は「その場で働き続けること」が目的なので、IT企業への転職・就職をゴールに据えた訓練設計にはなっていません。就労移行支援は、最終的に一般企業への就職を目指すサービスなので、IT職種への就職支援に特化した事業所も多数存在します。
理由2:ITスキル訓練に特化した事業所がある
就労移行支援の中には、プログラミング・Webデザイン・ITパスポート・基本情報技術者試験の対策など、IT職種に特化したカリキュラムを提供している事業所があります。
理由3:就職後の定着支援がある
就労移行支援では、就職が決まった後も最大6か月の定着支援を受けられます。「入社したはいいが、職場に馴染めず早期離職した」というリスクを下げられる仕組みです。
理由4:ビジネスマナー・コミュニケーション訓練も受けられる
IT技術だけあっても、職場での報告・連絡・相談や、チームでの協働ができなければ長続きしません。就労移行支援では、技術スキルと並行してビジネス上のコミュニケーション訓練も受けられるため、社会人基礎力を総合的に底上げできます。
よくある質問(FAQ)
Q: 就労移行支援を使った後、就職できなかったらどうなる?
就職できなかった場合でも、就労移行支援の延長申請・就労継続支援A型またはB型への切り替え・別の就労移行支援事業所を探すといった選択肢があります。「2年で必ず就職しなければいけない」というプレッシャーは感じると思いますが、自分のペースを大切にしながら次の一手を考えることが重要です。
Q: 精神障がい・発達障がいでも就労移行支援を使える?
使えます。むしろ現在の就労移行支援の利用者の中心は、うつ病・適応障がい・双極性障がい・ASD・ADHDなど、精神・発達障がいを持つ方です。手帳がない方でも、医師の診断書があれば利用できるケースがほとんどです。
まとめ
- 就労移行支援:一般企業への就職を目指す訓練の場。期間は原則2年。収入は発生しないが、就職後の定着支援もある
- 就労継続支援A型:雇用契約を結んで福祉事業所で働く。最低賃金が適用される給与が発生。期限なし
- 就労継続支援B型:雇用契約なし・工賃は低いが、最もハードルが低くペース配分しやすい。期限なし
IT就職を目指すなら、就労移行支援が最も目的に合った選択肢です。


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