この記事でわかること
- 厚生労働省の統計にもとづく、就労移行支援の最新の一般就労移行率(令和6年・60.2%)
- 「就職率」という言葉が3つの異なる意味で使われていて、そのまま比較できない理由
- 13年間で44.8%から60.2%へ上昇してきた推移と、令和2年に一度下がった背景
- それでも「意味ない」と言われる最大の要因である、事業所ごとの実績格差
- 実績のある事業所かどうかを見学時に確かめる、3つの具体的な質問
結論:国の統計では6割が一般就労に移行しています
就労移行支援は意味がないのか、という疑問に数字で答えます。厚生労働省の社会福祉施設等調査によると、令和6年に就労移行支援のサービス利用を終了した人のうち、一般就労に移行した人の割合は60.2%でした。人数にすると16,827人です。約10人に6人が、一般企業への就職という形でサービスを終えている計算になります。
この数字をどう受け取るかは人によって分かれます。6割を「思ったより高い」と感じる方もいれば、「4割は就職できていないのか」と感じる方もいます。ただ、少なくとも「通っても誰も就職できていない」という意味での「意味ない」は、全国の統計とは一致しません。一方で「どの事業所に通っても同じ結果になる」というのも事実ではありません。この記事では、その両方を数字で見ていきます。
「就職率」には3つの違う意味があります
就労移行支援の就職率を調べると、56%、80%、91%といった数字が並びます。これは、どれかが嘘をついているわけではありません。そもそも計算の分母が違う3種類の数字が、同じ「就職率」という言葉で呼ばれているためです。ここを整理しないまま数字を比べても意味がありません。
①国の統計でいう「移行率」
厚生労働省が公表している数字は、正確には「就職率」ではなく一般就労への移行率です。分母は「その年にサービス利用を終了した人」全員で、分子は「そのうち一般就労に移行した人」です。令和6年の就労移行支援の移行率が60.2%というのは、この定義にもとづく数字です。
この分母には、就職が決まって卒業した人だけでなく、体調が続かず途中で利用をやめた人、標準利用期間の2年を使い切った人、別のサービスに移った人も含まれます。全国のすべての事業所を対象にした、もっとも条件の厳しい数字だとお考えください。
②事業所が公表する「就職率」
事業所のサイトで見かける80%や90%台という数字は、多くの場合その事業所独自の集計です。分母を「就職活動を開始した人」や「カリキュラムを修了した人」に限定すれば、途中で通えなくなった人が分母から外れるため、数字は当然高くなります。
これは不正な数字という意味ではありません。ただし国の統計とは分母が違うため、60.2%と91%を並べて「この事業所は平均より30ポイント優秀」と読むのは誤りです。比較したい場合は、後述する3つの質問で分母を確認する必要があります。
③就職後に続いたかを示す「定着率」
3つ目が定着率です。これは就職した人が、その後どれだけ働き続けられたかを示します。就労移行支援では「就職後6か月以上の定着」が制度上の重要な区切りになっています。
就職率が高くても定着率が低ければ、短期間で離職した人が多いことになります。利用する側にとって本当に知りたいのは「就職できるか」だけでなく「その後も働き続けられるか」ですから、定着率のほうが実質的に重要な指標です。

13年間の推移:44.8%から60.2%へ上昇しています
数字は長期的に上がり続けています
就労移行支援の一般就労移行率は、平成24年の44.8%から令和6年の60.2%まで、13年間でおよそ15ポイント上昇しました。年ごとの推移は次のとおりです。
| 年 | 移行率 | 移行者数 |
|---|---|---|
| 平成24年 | 44.8% | 4,570人 |
| 平成30年 | 52.9% | 12,244人 |
| 令和元年 | 54.7% | 13,288人 |
| 令和2年 | 53.4% | 11,614人 |
| 令和3年 | 56.3% | 13,946人 |
| 令和4年 | 57.2% | 15,094人 |
| 令和5年 | 58.8% | 15,675人 |
| 令和6年 | 60.2% | 16,827人 |
ここで注意していただきたいのが、他サイトで多く見かける58.8%という数字は令和5年のもので、1年古いという点です。令和6年分の公表により、現在の最新値は60.2%になっています。就労移行支援を検討する際は、数字がいつ時点のものかを確認してください。
令和2年に一度下がった理由
推移を見ると、令和元年の54.7%から令和2年の53.4%へ、一度だけ下がっています。移行者数も13,288人から11,614人へと約1,700人減りました。時期から見て、新型コロナウイルス感染症の影響で企業の採用活動が停滞したことが背景にあります。
ただしこの落ち込みは1年で止まり、令和3年には56.3%へ回復しています。その後も4年連続で上昇し、令和6年に過去最高の60.2%となりました。就労系障害福祉サービス全体で見ても、令和6年の一般就労移行者は約2.9万人と前年比約9%増です。長期のトレンドとしては、就職につながる方向に動いています。
それでも「意味ない」と言われる理由は事業所間の格差です
移行率0%の事業所が3割弱あります
全国平均が60.2%であっても、それは「どの事業所を選んでも6割の確率で就職できる」という意味ではありません。厚生労働省の報酬改定検討チームに提出された資料によると、一般就労への移行率が20%以上の事業所は51.9%である一方、移行率が0%、つまり1年間で1人も一般就労に送り出せていない事業所が3割弱存在していました。
この調査は平成28年4月分のもの(回答率89.2%)で、現在の最新データではありません。ただ、実績が事業所ごとに大きく分かれるという構造そのものは、報酬制度が実績連動になっている現在も変わっていません。「就労移行支援は意味ない」という声の多くは、この下位層の事業所に当たった人の実感であると考えるのが自然です。平均値ではなく、自分が通う事業所の実績を確認することが決定的に重要になります。
報酬が定着率で7段階に分かれています
格差が生まれる構造は、制度の側からも確認できます。就労移行支援の基本報酬は、平成30年の報酬改定以降、就職後6か月以上の定着率が高い事業所ほど高くなる仕組みです。令和6年度の報酬では、定員20人以下の事業所の場合、次の7段階に分かれています。
| 就職後6か月以上の定着率 | 基本報酬(1日あたり) |
|---|---|
| 5割以上 | 1,128単位 |
| 4割以上5割未満 | 959単位 |
| 3割以上4割未満 | 820単位 |
| 2割以上3割未満 | 690単位 |
| 1割以上2割未満 | 557単位 |
| 0割超1割未満 | 507単位 |
| 0 | 468単位 |
最上位と最下位では、1日あたりの報酬に2.4倍の差があります。実績を出している事業所には多くの報酬が入り、支援員を増やしたり訓練内容を充実させたりできます。逆に実績が出ない事業所は報酬が下がり、人員体制がさらに厳しくなります。この差が年々開いていく構造になっています。
利用する側にとって重要なのは、この定着率は事業所が国に報告している数字であり、聞けば答えられる性質のものだという点です。見学時に質問して明確な答えが返ってこない場合、その理由を考える材料になります。
実績のある事業所を見分ける3つの質問
全国平均の60.2%という数字は、事業所選びの判断材料としてはほとんど役に立ちません。見学のときに次の3つを質問してください。いずれも事業所が把握しているはずの数字です。
質問1「就職後6か月の定着率は何割ですか」
前述のとおり、この数字は基本報酬の区分を決める指標なので、事業所は必ず把握しています。5割以上であれば最上位区分に該当し、支援体制が整っている可能性が高いと判断できます。
「把握していない」「集計していない」という回答が返ってきた場合は、実績が低い区分にある可能性を考えてください。答えられない理由を丁寧に説明してくれるかどうかも、支援員の姿勢を見る材料になります。
質問2「その就職率の分母は何人ですか」
パンフレットに90%といった数字が載っている場合、必ず分母を確認してください。「就職活動を始めた人のうち」なのか「利用を終了した人全員のうち」なのかで、数字の意味はまったく変わります。
あわせて「対象となった人数」も聞いてください。10人中9人の90%と、100人中90人の90%では信頼度が異なります。分母が極端に小さい場合、その年にたまたま良い結果が出ただけという可能性があります。
質問3「直近1年で何人が就職しましたか」
割合ではなく実数で聞くと、事業所の実力がはっきりします。移行率0%の事業所が3割弱あるというデータを踏まえると、この質問に具体的な人数で答えられるかどうかが、まず最初の分かれ目になります。
さらに「その方々はどんな職種に就きましたか」まで聞けると理想的です。自分が目指す職種の実績があるかどうかは、訓練内容が自分の希望と噛み合うかを判断する直接の材料になります。IT系やAI・データサイエンス系の職種を目指す場合、その分野の就職実績がある事業所かどうかで結果は大きく変わります。
よくある質問
就職率60.2%は高いのですか、低いのですか
比較の対象によります。就労継続支援B型の一般就労移行率は令和6年で11.8%、A型は29.2%ですから、就労系障害福祉サービスの中では就労移行支援がもっとも高い数字です。一般就労を目指すためのサービスなので、当然の結果とも言えます。
一方で、4割の人は一般就労以外の形でサービスを終えています。この中には体調面で継続が難しくなった方や、別のサービスに移った方が含まれます。100%就職できるサービスではない、という理解は必要です。
2年間通えば必ず就職できますか
できるとは言えません。標準利用期間は24か月ですが、期間を使い切っても就職に至らない方は一定数います。移行率60.2%という数字は、逆に言えば約4割はそうならなかったということです。
期間の長さより、通う事業所の実績と、自分の目指す職種との相性のほうが結果を左右します。2年という期間を使い切ることを目標にせず、早い段階から具体的な職種と求人を意識して訓練を進めることが重要です。
事業所の実績はどこで調べられますか
もっとも確実なのは見学時に直接質問することです。前述の3つの質問がそのまま使えます。事業所によっては、都道府県や市町村の情報公表システムで基本情報を確認できる場合もあります。
公式サイトの数字だけで判断するのは避けてください。分母の定義が書かれていないことが多く、他の事業所と比較できる形になっていないためです。
移行率が低い事業所は何が違うのですか
就職支援そのものに割ける人員と、企業とのつながりの量が主な差です。基本報酬が定着率で7段階に分かれている以上、実績が低い事業所ほど報酬が少なく、支援員を厚く配置しにくくなります。
訓練内容が実際の求人と結びついているかも差になります。作業訓練が中心で、企業実習や求人紹介の機会が乏しい場合、通っている期間が就職に直結しにくくなります。見学時に、直近の実習先や就職先の職種を具体的に聞いてください。
今の事業所が合わない場合はどうすればよいですか
事業所を変更することは制度上可能です。移行率0%の事業所が3割弱存在するというデータを踏まえると、合わないまま通い続けるより、実績のある事業所に移るほうが結果につながります。
変更を検討する場合は、先に次の候補を見学し、上記3つの質問で実績を確認してから手続きを進めてください。相談支援専門員や市町村の窓口が手続きの相談先になります。

まとめ
- 厚生労働省の統計では、令和6年の就労移行支援の一般就労移行率は60.2%(16,827人)で、過去最高を更新しています
- 「就職率」は、国の統計の移行率・事業所独自の就職率・定着率という3つの異なる数字が同じ言葉で呼ばれているため、そのまま比較できません
- 全国平均が6割でも、移行率0%の事業所が3割弱存在します。「意味ない」という評価の多くは、事業所ごとの格差から生まれています
- 判断すべきは全国平均ではなく通う事業所の実績です。「定着率」「就職率の分母」「直近1年の就職人数」の3点を見学時に必ず確認してください
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次のステップ
- 就労移行支援は「やめとけ」と言われる5つの理由|数字ではなく、実際に言われている内容から判断したい方はこちら
- 就労移行支援の見学でチェックすべきポイント|この記事の3つの質問を含め、見学時の確認事項をまとめています
- IT・AI系に強い就労移行支援事業所の比較|目指す職種の就職実績から事業所を選びたい方はこちら
出典
- 厚生労働省「障害福祉サービスからの就職者」(社会福祉施設等調査。各年の移行者数は当該年10月1日時点における前年1年間の実績)
- 厚生労働省 社会保障審議会障害者部会「障害者の就労支援について」
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第13回(平成29年10月31日)資料2「就労移行支援に係る報酬・基準について」(移行率別の事業所割合は厚生労働省障害福祉課調べ・平成28年4月分・回答率89.2%)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定」関連資料(基本報酬の区分)

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