就労移行支援の報酬単価とは?利用者が通うたびに事業所へ入る金額を元支援員が解説

家計簿や貯金箱などお金にまつわるものが書かれている 就労移行支援の基礎知識

就労移行支援を利用するとき、多くの方が「費用は無料(または低負担)」と説明を受けます。
でも、「では事業所はどうやって運営しているのか」と疑問に思ったことはありませんか?

実は就労移行支援の事業所は、利用者が通所するたびに国・都道府県・市区町村から「訓練等給付費」という報酬を受け取っています
この仕組みを知っておくと、事業所が何に力を入れるインセンティブを持っているかが見えてきます。

元就労移行支援員として現場でこの制度を見てきた立場から、正直にお伝えします。

就労移行支援の報酬はどこから来るのか

就労移行支援は「障害福祉サービス」に分類されており、その運営費用は公費で賄われています。
費用の負担割合はおおむね以下のとおりです。

負担元割合
国(厚生労働省)約50%
都道府県約25%
市区町村約25%

利用者が支払う自己負担(世帯収入に応じた上限額)は別途ありますが、9割以上の利用者は自己負担ゼロで利用しています。
つまり事業所の収入のほぼすべてが公費から来ています。

1日の通所で事業所に入る金額

報酬は「単位」という数値で設定されており、1単位はおおむね10円前後(地域によって異なる)です。

就労移行支援の基本報酬(1日あたり・定員規模別)は以下のとおりです。

定員規模基本報酬(単位)金額換算(概算)
20人以下約980〜1,000単位約9,000〜11,000円
21〜40人約840〜860単位約8,000〜9,500円
41人以上約750〜770単位約7,000〜8,500円

つまり利用者1人が1日通所するごとに、事業所には約7,000〜11,000円の報酬が入ります

この金額に各種加算(医療連携・社会生活支援・就労定着支援体制など)が上乗せされるため、実際の報酬単価はさらに高くなるケースもあります。

月間・年間でいくらになるのか

試算してみます。定員20人・利用者が月20日通所したケースです。

項目計算金額(概算)
1人あたりの月間報酬10,000円 × 20日約20万円
20人全員の月間報酬合計20万円 × 20人約400万円/月
年間報酬合計(12ヶ月)400万円 × 12約4,800万円/年

定員20人規模の小さな事業所でも、年間約5,000万円近い公費が投入されていることになります。
大手が全国に数十〜数百拠点を展開できる理由が、この収益構造にあります。

就職実績が高い事業所が報酬を多く得られる仕組み

単純に「通所日数に応じて報酬が出る」だけではありません。
厚生労働省は就職実績の高い事業所に対して「就労移行支援体制加算」を設けており、前年度の就職者数・定着率に応じて基本報酬に上乗せされます。

つまり就職実績が高い事業所ほど、1日あたりの報酬単価が高くなります。

就職実績(前年度)加算の方向性
就職者が多く定着率も高い基本報酬に加算 → 単価アップ
就職者が少ない・定着率が低い加算なし・減算の可能性も

この仕組みにより、事業所には「利用者を就職させること」に対する経済的なインセンティブが設計されています
良質な就労移行支援事業所が就職支援に力を入れる理由の一つはここにあります。

利用者が知っておくべきこと

この仕組みを知った上で、事業所選びに活かせるポイントを整理します。

通所日数を増やすことが事業所の収益になる

事業所の報酬は通所日数に比例します。

そのため体調が悪い日でも「来てください」と言われるケースがあります。体調管理を優先することに遠慮は不要です
無理な通所を求めてくる事業所は、利用者より収益を優先している可能性があります。

就職実績は事業所の収益にも直結する

就職実績が高い事業所は報酬加算も高く、経営が安定しています。
利用者の就職を本気で支援している事業所は、自分たちの収益のためにも本気で動きます。
見学の際に就職実績・定着率を必ず確認しましょう。

2年間の利用制限がある理由

就労移行支援は原則2年間という利用制限があります。
これは「いつまでも通わせ続けて報酬を得る」という事業者側のモラルハザードを防ぐための制度設計です。

まとめ

就労移行支援の事業所は、利用者が通所するたびに1日あたり約7,000〜11,000円の報酬を自治体から受け取っています。
定員20人規模でも年間約5,000万円近い公費が投入される大きな仕組みです。

この制度設計を知ると、なぜ良質な事業所が就職実績にこだわるのか、逆になぜ「通わせるだけ」の事業所が存在してしまうのかが見えてきます。
事業所を選ぶ際は、就職実績・定着率・スタッフの姿勢をしっかり確認することをおすすめします。

就労移行支援の事業所選びで迷っている方は、見学で確認すべき10のチェックポイントもあわせてご覧ください。

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